■ノルディックウォーキングとの出会いから指導者育成に至るまで「前編1」
--1999年の6月8日に初めてノルディックウォーキングの講習を開かれたそうですね。
藤田さんご自身のことについてお聞きします。
■北海道伊達市大滝区
周囲を山に囲まれ、寒冷な気候で積雪が多い。 人口の大半は、長流川沿いの北湯沢温泉町・優徳町・本郷・本町地区に居住する。
北湯沢温泉・ホロホロ山(1,322m)・徳舜瞥山(1,309m)周辺は、支笏洞爺国立公園に指定されている。
昭園・上野・円山・三階滝地区には、台地状の土地が広がっている。 長流川沿いは、平地が少ない。
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藤田さんは北海道、大滝村のご出身ですか? そうです。1951年生まれです。
--ずっと大滝村にお住まいですか?
生まれたのは大滝村ですが、何年か小樽市やスキーメーカーに勤務し、また大滝に戻って、行政職員をしております。
--大滝村はどういうところですか?
今年の三月に伊達市と合併しまして、場所は千歳空港から車で1時間10分くらい、支笏湖(しこつこ)と洞爺湖(とうやこ)のほぼ中央あたりにある山あいの小さな村ですが、今年から伊達市になりまして、大滝区になりました。北海道は自然がいっぱいで、1300mくらいの徳舜瞥(トクシュンベツ)っていう山と長流川という川がありましてその中に温泉があります。ここは北湯沢温泉という宿泊客が3000人くらい泊まれる大きな大型ホテルが2軒と小さいのを含めておよそ6軒くらいあるところです。
--なかなか風光明媚なところのようですね。
そうですね、渓流美がとてもいいところですね。
--雪はいつごろから?
初雪は10月の末に降ったり11月の上旬に降りますが、大体根雪になるのは12月の20日以降でしょうね。
(春は?)雪がなくなるのは4月の中旬ですね。
--冬の間はスキーのシーズンですね。
そうですね。昔は小さなゲレンデスキー場がありましたが、現在は閉鎖されまして現在はクロスカントリースキーコースのパーマネントコースがあります。
--役所に勤務されている藤田さんがノルディックウォーキングとであったきっかけは?
(※1)SAJとは?
全日本スキー連盟、Ski Assotiation
of Japan。
リンク:全日本スキー連盟
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1998年ごろに地元に別荘を持っている方が、フィンランドのスポーツライターをご紹介してくださったんです。最初は、札幌にログハウスを建てられないかという話で、建築法でなかなかログハウスは建てられないが、大滝村みたいな山の中ならばログハウスが建てられるんじゃないか。ということから話は始まりました。
その方に「どうして北海道はクロスカントリーはしないの?」と聞かれたのをきっかけに、1991年から小さな初心者を対象としたクロスカントリーのイベントのようなものが始まりました。
それから徐々に回を重ねていき、クロスカントリーも30kmだとか、SAJ(※1)公認大会(大衆クロスカントリーと言い、オリンピック選手からほんとの初心者まで一緒にできる大会)が開催されました。そのような大会などがきっかけとなり、フィンランドの方やワールドカップの選手などがおいでになるようになりました。その1998年頃には、フィンランドから北海道のクロスカントリーの大会に来る人がノルディックウォーキングを紹介してくれました。それで僕もその頃には、「フィンランドでノルディックウォーキングをやっているんだ」ということは知っていました。
--存在を知って、実際に講習会を始めるまでに準備をされていたわけですね。
(※1)コンバインドとは?
ノルディックコンバインドは冬季スキー競技スポーツの一つで、クロスカントリースキーとスキージャンプという二つのノルディックスキー競技を組み合わせて競う競技のことである。英語ではNordic
combinedと呼ばれ、ドイツ語ではNordische Kombinationと呼ばれている。
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その後、1999年の1月から2000年の3月までの2シーズン、クロスカントリーの指導にフィンランドからやってきたトピ・サルパランタ氏という方が、大滝にクロスカントリーのスポーツインストラクターとして教育委員会で仕事をしていたのです。トピ・サルパランタ氏は、コンバインド(※2)のナショナルチームとして、過去リレハンメルのオリンピックなどに出た方です。
たまたま私もその担当だったので、冬の間はクロスカントリーのスキーをしていました。当然その間に大滝にはクロスカントリーのコースができていましたので、夏場の仕事として何をするんだ、という問題になり、同じ健康づくりならフィンランドで始まったノルディックウォーキングをやろう。という事になりました。
トピ・サルパランタ氏はスポーツインストラクターであり、さらにオリンピック選手だったこともあったため、たまたまポールメーカーとコンタクトがとれて、すぐその用具が用意できました。その当時日本ではなかなかノルディックウォークのポールがありませんでした。
それで、彼が向こうと連絡を取ってくれ、3月の末くらいから準備を始めて、6月8日にポールを寄贈していただいた。というのが始まりですね。
--エクセル社ですね。どのくらい寄贈していただいたんですか?
12組だと思います。
--この方はスポーツインストラクターということですが、お若い方ですか?
(※3)フィンランドの徴兵制度とは?
フィンランドでは、17歳以上の男性に240日の兵役が義務付けられている。高校を卒業後、大学などに進学する前、または進学後の約8ヶ月間、軍隊に行く人が多い。
近年は、徴兵を志望しない場合には、その代わりに病院や老人ホームでボランティア活動をすることが許されている。
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当時のナショナルチームに入っていたころは18歳か19歳ぐらいだったと思います。ちょうど大学を卒業して武者修行のためにとにかく大滝に来たい。という事でした。
大滝では、2月の第一週に国際スキーマラソン大会を実施しています。その為、1998年の3月、長野オリンピックがあったときですね、その年にも、過去のオリンピック選手とかワールドカップとかの選手がスキー大会のために大滝に来ていて、フィンランドとのスポーツ交流がありました。
そのときにトピ・サルパランタ氏も来られました。たまたままだ彼がナショナルチームに在籍していた時に、大滝で事前に合宿をしてから札幌のワールドカップに出場しよう、ということで、こちらに来ていたのです。大学を卒業して本当は徴兵(※3)があり、最低6ヶ月はあるそうなのですが、彼は日本でボランティア活動をする予定になっていて、大滝に来て2シーズンスキーを教えることになったんです。
--ずいぶん大滝になじみが深いんですね。
そうですね、大滝は、フィンランドとそもそももう17,8年くらいは民間交流していますからね。その中に、たまたまノルディックウォーキングが夏場の運動として入ってきたということなんです。
--エクセル社も協力してくれて講習会の開催になったということですね。その時の参加者への呼びかけの方法は?
それは、教育関係の社会教育事業として取り組んでいましたので、広報などからご案内していたと思います。
--掲示板によると最初のうちはトピ・サルパランタ氏のことを村の方々がもの珍し気に見ていたということでしたが、講習会の応募の状況はどうでしたか?
彼はすでに冬場にスキーを教えていましたし、ニュースやテレビで広く紹介されていました。また、彼自体が住民に大変親しまれる人だったものですから、たくさんのご婦人だとか女性ファンなどが集まって、それは大変盛況だったですよ(笑)。
--イケメンインストラクターって言う感じですか。
ああ、そうですね(笑)。
現在は、日本のコンバインドの民間チームのコーチをしているんです。(日本にいらっしゃるんですか?)たまに来ますよ。彼は日本語を覚えてますしね、よく北海道の企業チームのコーチもやっています。
--1999年の6月8日に始まったということですが、その日の様子は覚えていますか?
(※4)キートス・マヤとは?
フィンランド語でキートスは「ありがとう」という言葉、マヤは小さな小屋を意味する。
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よく覚えてます。トピ・サルパランタ氏のお父さんもサラエボオリンピックか何かのフィンランドチームのコーチをやっていました。その為、エクセル社にも連絡が取れて、お父さんが大滝に遊びに来るときに(ポールを)持ってきてくれたのです。そして、ポールの授与式と言いますか、贈呈式を「キートス・マヤ(※注4)」という休憩所で横断幕をしてそれで渡していただいて、そこから教室がはじまるということでやっていますからそれはもう鮮明に覚えていますね。
--贈呈されたのは12組ということですが、応募されたのはその数を上回っていたんですか?
大滝は人口1600人くらいのところなんです。10人集めるというと大きな町で100人くらい集めるくらいという現状ですからね(笑)。平日の昼間でしたから8人から10人くらいだったかと思います。(平日ですか)はい。大滝にとっては10人っていうのはすごい人数ですね(笑)。
--6月の平日ですと学校や会社に行っている方はこれなかった?
ほとんどが主婦の方でしたね。(年齢層は?)若い方からご年配の方までいました。20代から50代くらいまでいたんじゃないでしょうか。
--そのときからずっと今まで講習会が続いているわけですね?
そうです。ただ、教育委員会が事業としてやっているものと2000年にできた協会が活動しているものとは区別されると思います。
--今も教育委員会の方もやっている?
はい。夜間に子供たちにノルディックウォーキングを教えるといったものを何本かやっていますね。
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